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一口コラム
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こちらのコラムでは週替わりで先生方が順番にお話しをしてまいります。
 
施術部 関口裕太

第803回 一口コラム

今回の担当は
施術部 関口裕太です。

令和8年2月19日

 

「マークシティの上、カスタードの午後」


日曜の渋谷。

スクランブル交差点の喧騒を抜けて、
マークシティのエスカレーターを上がる。

少しずつ、音が変わる。

地上のざわめきが遠ざかって、
空気がやわらかくなる。

渋谷エクセルホテル。
その中にある、エスタシオンカフェ。

ホテルのカフェには、独特の余裕がある。

急がない。
声が大きくない。
時間が、ちゃんと流れている。

ショーケースの中に、
あいつはいる。

エスタシオンカフェのシュークリーム。

見た目からして、潔い。

クリーム、盛りすぎだろ。
そう言いたくなる量。

はみ出している。
遠慮という文化を知らない。

いい。

日曜なんだから、これくらいでいい。

テーブルに置くと、ずしりとした存在感。
軽やかなホテルスイーツではない。

むしろ、真逆だ。

持ち上げる。

重い。

この店のシューは、
“軽さ”より“密度”。

ひとくち。

……ああ。

カスタードが、ちゃんと主役だ。

濃い。

とろとろというより、なめらかに粘度がある。
卵黄のコクが前に出て、
甘さは丸い。

カスタードは、卵・牛乳・砂糖。
材料は驚くほど少ない。

でも、火加減ひとつで台無しになる。

弱すぎれば、ゆるい。
強すぎれば、もったり重い。

ちょうどいい“とろみ”を出すには、
絶妙な温度管理がいる。

ホテルのカフェで出すカスタードは、
ごまかせない。

エスタシオンのそれは、
ちゃんと丁寧だ。

シュー皮は、やや厚め。

シュー生地は、焼くときに一気に水分が蒸発して
中が空洞になる。

あの空洞は、
“クリームを受け止めるための構造”だ。

だから、この量が入る。

二口目。

粉砂糖がぽろりと落ちる。

窓の外に見える渋谷は、
いつもより少し静かだ。

ホテルの上階というだけで、
街の喧騒が遠景になる。

日曜の午後に甘いものを食べると、
不思議と許された気持ちになる。

明日が来ることを知っているからだろうか。

それとも、
この高さがそうさせるのか。

最後の一口。
クリームが、名残惜しく残る。

指でさらう。
静かだ。

満ちる、というのは
こういうことかもしれない。

渋谷の真上で、
カスタードに包まれる。

派手じゃない。
でも、ちゃんと贅沢。

マークシティの上の、
日曜の午後。

この密度が、ちょうどいい。
量を求めず。密度を求めていこう。


 
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